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2019年の記事

昨年度DemoDay出場者の近況(App Inventor日本語化プロジェクト)

  • トピックス
  • 2019.06.18

2018年のコンテスト(U15部門)にアメリカ・L.A.から参加し、長野県教育委員会賞を受賞した宮島健さんが、現在、「App Inventor」の日本語化プロジェクトに参加しています。

App Inventorとは、Scratchのように、ブロックの組み合わせで本格的なスマホアプリが作れるシステムです。
スマホのカメラやセンサー等を活用したアプリを作成でき、かつ一部ストアにも公開できる等、アプリ制作においては有効なツールの1つですが、今まで日本語のサポートがありませんでした。

そこで宮島さんが、
「多くの日本の皆さん、特に小・中学生の皆さんに、簡単にスマホアプリを作っていただけるように。」
と、App Inventorの日本語化プロジェクトをスタートしたとのことです。

当コンテストをきっかけに、アプリ開発に取り組む日本や長野県の仲間の存在を知り、こうして日本語化プロジェクトに結びつけてくれたことは、事務局としても大変うれしく思います。
アプリ制作に興味があるみなさんにとって参考になる情報となりますので、ご興味があればぜひご覧ください。

(宮島健さんも出場した、2018年のDemoDayの様子はこちらから)

2018.12.8(Sat)DemoDayレポート@信州大学国際科学イノベーションセンター

  • コンテスト結果
  • 2019.01.24

2015年にスタートし、4回目の開催となった信州未来アプリコンテスト0(ZERO)。
過去最多68件の応募作品の中から書類審査を通過した21組のファイナリスト達が、自作のアプリをプレゼンするDemoDayが開催されました。

今回のテーマは、「”あっ”と言わせるアプリ」。
それでは当日の様子をレポートしていきましょう!

U15(15歳以下)

長野県内各地はもちろん、群馬県や徳島県、遠くアメリカL.A.からも、小・中学生10組が出場しました。
小・中学生ならではの自由な発想のもと、身近な困りごとや興味と向き合い開発されたアプリは、どれも多様性に富んだものでした。

U15-01
吉村清太郎(鳴門教育大学附属小学校)
App:「ネコトイレしないでね」
Member:吉村清太郎 
Mentor:吉村健太(シャハルのプログラミングスクール)

トップバッターは、今回の最年少ファイナリストである小学3年生の吉村清太郎さん。都合により、徳島県からTV会議での参加となりました。

「家が野良猫の通り道になっていたり、家の周りにうんちをされて困っているが、傷つけるのはかわいそう」という考えから、猫が嫌がるという19KHzの音で傷つけることなく追い払うアプリを開発しました。プレゼンでは、アプリの機能説明はもちろん、なぜ開発に至ったか、どう考えたか、といった過程にも丁寧に触れ、審査員からは「しっかりと順序立てて発表できていて分かり易かった」という評価が聞かれました。

「猫を傷つけずに追い払う」優しいアプリを考えてくれた吉村さん。まだあどけない印象もありましたが、トップバッターかつ慣れないTV会議にも関わらず、しっかりと落ち着いたプレゼンをしてくれました。今後も”身近な課題をアプリで開発すること”の面白さを感じながら、活動を進めていってほしいです。

 

U15-02
水谷俊介(信州大学教育学部附属松本小学校)
App:「自転車あっ!!」
Member:水谷俊介
Mentor:濱田康(BeeTreeプログラミング教室)
※信越情報通信懇談会長賞、NTTドコモ長野支店賞受賞

小学生にとって、自転車は主要な移動手段の1つですが、同時に危険も伴います。過去に自転車で転び、前歯を痛めてしまったという実経験をもとに、「誰でも自転車の危険を学べるように」とアプリを開発したのは、小学5年生の水谷俊介さん。

アプリの中を自転車で進んでいき、危険を察知したら「あっ!」と叫ぶことで適切に危険予測ができたかジャッジしてくれる、マイクと連動したシミュレーションアプリです。実機デモでは、会場や審査員を巻き込んだ巧みなプレゼンを披露し、そこかしこから「あっ!」の声が上がっていました。

テーマの「あっと言わせる」をダジャレで落とし込んで来たかと思いきや、実はしっかりと練り込まれた内容、昼/夜やBGMなど細かい演出、そして人を楽しませようとする姿勢のプレゼン運び。様々な面で審査員から高い評価を得た作品でした。

 

U15-03
片桐侑祐(宮田村立宮田小学校)
App:「人間監視ドア」
Member:片桐侑祐
Mentor:池上大貴(STEAM Lab Sahara)

特定の場所を何人が利用したのかを教えてくれるアプリを開発したのは、小学5年生の片桐侑祐さん。モーションセンサーを搭載したIoTデバイスと、センサーが何回反応したかを教えてくれるアプリがセットになった作品です。

「この装置を使えば利用者が多い場所や混雑する時間帯を調べることができるので、体育館や図書館など、学校内で人気の場所の混雑具合が分かる。」と、片桐さん。
ただし用途はそれだけでなく、外出中のペットの見守りや、留守中に反応したらメールで知らせる防犯装置など、他への活用方法まで幅広く考えていることが印象的でした。

アプリだけでなくIoTデバイスまで作った技術力と、活用アイデアの幅広さに審査員の評価の声が多く集まった片桐さん。今回は会場の機材の調子が悪く、万全の状態でプレゼンができなかったアクシデントもありましたが、今回の経験を糧にして、次回はさらなる面白い作品を見せてくれることを期待しています。

 

U15-04
カイトスイっち(駒ヶ根市立赤穂小学校)
App:「ピタゴラロボット」
Member:池上快斗、松井悠、新井柔人、宮下馨
Mentor:池上大貴(STEAM Lab Sahara)
※ゲームクリエイター賞受賞

某教育番組が大好きというカイトスイっちのみなさんが開発したのは、現実と仮想を組み合わせた空間装置。プログラミングを学んだ時に、「これで好きなものを作ってみよう!」と仲間と考え、開発に取り組みました。

BGMに乗せて、リアル空間で玉が転がっていくと、突然玉がバーチャル空間に切り替わります。切り替わりの瞬間では会場もどよめきました。
「オリジナルは”失敗してしまうかも”というハラハラ感があるので、バーチャルでもそのハラハラ感を演出できないか」
「リアルからバーチャルの移行が面白かったので、またリアルに戻る仕掛けができればもっと面白い」
など、審査員からも様々なアイデアが飛び出しました。

楽しんで開発したことが伝わってきた、カイトスイっちのみなさん。今回やり切れなかったところや、新しく芽生えたアイデアを、ものづくり欲に任せてどんどんブラッシュアップしていってくれることを期待しています。

 

U15-05
井汲優斗(未来工作ゼミ未来道場黒帯クラス)
App:「ここじゃねくと」
Member:井汲優斗
Mentor:阿部正寛(未来工作ゼミ)
※ソフトバンク賞受賞

「あれ?どこにしまったっけ?どこに置いたっけ?」
こんな、誰しも心当たりがあるであろう物の紛失に注目し、「ここにあるかもしれない」を教えてくれるアプリを開発したのは、未来工作ゼミ未来道場黒帯クラスの中学生、井汲優斗さん。

物をなくしたときに「ここにあるかもしれない」という候補を1つずつ案内してくれるアプリなのですが、すごいのはユーザーが任意で候補を追加していくことができる、つまりアプリが自分仕様に成長していくところです。「誰でも簡単に追加できるよう、シンプルな設計を心掛けた」と話してくれた井汲さん。

不思議な響きのアプリ名「ここじゃねくと」は、”ここじゃね?”と”コネクト”を合わせたとのこと。
多くの人が当てはまる困りごとが起点になっている点に加え、ネーミングやアプリ内の演出など随所にちりばめられたユニークさと、それに対比するような丁寧なシステム作り。そして何より「成長していく」という要素をアプリに付加したことが高評価のアプリでした。
これで完成とはせずに、是非、時間をかけてバージョンアップして欲しいです。

 

U15-06
skylake(大町市立仁科台中学校)
App:「お年寄りとAI」
Member:宮島寿明、井上悠
Mentor:小島一生(大町市立仁科台中学校)
※KDDI賞受賞

1人暮らしの高齢者にフォーカスし、AIを使った見守りアプリの開発にチャレンジしたのは、大町市仁科台中学校のskylakeのお2人。当日は代表で宮島寿明さんがプレゼンしました。

アプリが独居老人の心のパートナーとなることを目指し、まずは実際に1人暮らしをしているお年寄りの方にインタビューしたというskylakeのみなさん。そのインタビューの結果から、アプリの仕様を決め、やりたいことを実現する手段としてチャットボットを使ったことを、丁寧に説明してくれました。

非常に難しい問題に取り組んでいる、skylakeのみなさん。
「お年寄りが簡単に使いこなせるようにするには、シンプルなUIが必要では?」
「キーワードから紐付いたメッセージを読み出すだけではなく、学習機能や予測機能が必要では?」
など、課題解決に向けたハードルはまだまだたくさんあるかと思いますが、「1人暮らしのお年寄りを笑顔にしたい」という想いが、とても素晴らしいと感じられるアプリでした。

 

U15-07
木こりFamily(新島学園中学校)
App:「きこりダイエット」
Member:小井戸泰成、鬼形燎汰、風間丈太郎、黒澤紘、小林大祐
Mentor:依田大志(未来工作ゼミ)

「痩せたい」という友人の切なる願いを叶えるために立ち上がった、新島学園中学校の木こりFamilyのみなさん。開発したのは、IoT斧!?

センサーを搭載したお手製のIoT斧を、同じくセンサーを搭載したIoT樹木の接点部分に、木こりが木を切るような動作で当てると、アプリ側で木こりのキャラクターが木を切っていきます。これを繰り返すことで、楽しく運動し、ダイエット効果を得ようという狙いです。中学生らしい、寸劇を取り入れた楽しいプレゼンを見せてくれました。当たり判定を確認するため、審査員が試してみるシーンも。

「楽しくないダイエットをどうすれば楽しくなるのか考えた」と、木こりFamilyのみなさん。身近な友人の願望を仲間と一緒に考え、形にしていくストーリーが見えるプレゼンでした。その一方で、IoTデバイスとアプリを開発した時に工夫した箇所、難しかった箇所も垣間見えたアプリでした。

 

U15-08
チョレギサラダ(新島学園中学校)

App:「脱出型目覚まし時計」
Member:福島奨、中嶋情、中島力、根岸大翔、林幸亮
Mentor:依田大志(未来工作ゼミ)

成長期の中学生にとって、朝はやはりつらいもの。そんな「朝起きること」を楽しく解決するためにアプリを開発したのは、新島学園中学校のチョレギサラダのみなさん。簡単に音を消せない目覚まし時計とアプリのセット作品です。

設定した時間になると音が鳴るという点は他の目覚まし時計と同じなのですが、アプリの画面に表示されるランダムなコードを見ながらその通りに目覚まし時計を操作しないと、音が鳴りやまない仕組みになっています。時間が経つにつれて、音楽がどんどんエスカレートしていく演出は、迫り来るタイムリミットに対して時限爆弾を解除するような、ハラハラドキドキ感がありました。

音の工夫の他、デバイスの機構がよくできている点も、審査員から高評価だったチョレギサラダのみなさん。「朝がつらくて起きられない」という等身大の課題に注目した、実用的なアプリでした。

 

U15-09
ベイちゃん愛好会(新島学園中学校)

App:「ポイント枕」
Member:萩原通允、藤澤蒼、鈴木偉也、松本太陽、中條翔
Mentor:依田大志(未来工作ゼミ)

きちんと睡眠を取るため、眠りをポイント化することを考えたのは、新島学園中学校のベイちゃん愛好会のみなさん。センサー搭載のIoT枕とアプリをセットで開発しました。

IoT枕が頭の重さを感知し、予め設定した睡眠時間内であればポイントを付与、設定時間以外であればポイントを没収するシステムです。気になるのはその寝心地。審査員も実際に頭を乗せて、寝心地を確認していました。

プレゼンでは残念ながら枕の不具合により動作がうまくいかなかったベイちゃん愛好会のみなさん。プレゼンが予定時間より早く終わり、残り時間で最後までトライを続ける姿勢も見られました。
「面白いアイデアなので、貯まったポイントの使い道などについても具体的に考えていくと、もっと面白くなる」という審査員の意見も多く、可能性を感じるアプリでした。

 

U15-10
宮島健(ハーバードウェストレイクスクール)

App:「My Formula」
Member:宮島健
Mentor:宮島隆
※長野県教育委員会賞受賞

米L.A.から参加したのは、ハーバードウェストレイクスクールの宮島健さん。開発したのは、任意で公式を登録できる電卓アプリ「My Formula」です。17時間の時差を超え、L.A.からTV会議での発表となりました。

学習の中で「公式を使ってその都度注意深く計算するのが苦手」と感じた宮島さんは、公式を登録して計算できる電卓アプリがあれば便利と考え、開発しました。GoogleのVision APIを採用し、AIによる画像認識を行っているため、カメラで撮影するだけで簡単に公式を登録することが可能です。実はこのアプリ、今回のコンテスト作品の中では唯一の実際にリリースされている作品であり、コンテストの中でもひときわ目立っていました。

ご家族の仕事の関係で幼少期から海外で生活していることもあり、「正直日本語より英語の方が得意」と宮島さん。日本語でのプレゼンテーションに少し不安があるとのことでしたが、それを全く感じさせず、的確な説明のプレゼンに、会場からは「すげー・・・!」とつぶやく声も聞こえてきました。
今後の課題として、UI・UXの改善を挙げた宮島さん。身の回り人や研究者にも使ってもらいながら感想を聞き、取り入れるべきところを取捨選択して、改善を続けていってほしいと思います。

 

U18(16~18歳)

長野県松本工業高校の3チームが書類審査を通過し、DemoDayに出場しました。
奇しくも3チームとも同じ高校からの出場となりましたが、技術活用を追及したものやアイデアをよく練ったものなど、チームにより特徴や方向性が異なる3作品となりました。

U18-01
電子工学部アルカディア7(長野県松本工業高等学校)
App:「男子高校生の夢 萌えアプリ モエちゃん」
Member:榊原颯太、塩入拓馬、丸山琳、瀬戸空輝、田見一翔、赤羽優斗、武井希龍
Mentor:三澤実(長野県松本工業高等学校)
※NTTドコモ長野支店賞受賞

男子高校生の夢をストレートに表現した、異彩を放つこのアプリ(というかロボット)開発したのは、長野県松本工業高等学校の電子工学部アルカディア7の皆さん。アプリのイメージとは裏腹に、アイデア出しから活用技術まで、実はしっかりと練り込まれているんじゃないか?と、書類審査時から審査員の注目を集めていました。

男子高生に癒しをもたらす外見を目指した、話せて動けるロボットであり、スケジュール機能や会話機能が搭載されています。ところがDemoDayの数日前にメモリが全て消えてしまったとのこと!できる限り復旧したのですが完全ではなく、プレゼン中もモエちゃんが意味深な動きを見せている場面もありました。

審査員との質疑応答の中、「モエちゃんに英語を喋らせ、英語の学習に活用したらどうか?」という問いに対して「それでは癒しを実現できない!」と答えてくれた電子工学部アルカディア7のみなさん。アプリを開発したきっかけの「癒し」からブレない、真っ直ぐな姿勢を感じました。さらなるモエちゃんの進化を期待しています。

 

U18-02
アウトドア侍(長野県松本工業高等学校)
App:「信州探検隊」
Member:高坂佳佑、曽根原匠真、百瀬天哉
Mentor:川上正直(長野県松本工業高等高校)

観光サイトに載っていない、地元の人しか知らない面白い公園やいい感じの河川敷など、”どローカル”な遊び場情報を共有できるアプリ「信州探検隊」を考案したのは、長野県松本工業高等学校のアウトドア侍のみなさん。それぞれ異なるアウトドアの格好に身を包んだ、個性的な3人組です。

松本駅前で若者に聞き取り調査をした結果浮き彫りになった「若者のアウトドア離れ」からアイデアを考案し、ユーザーがおすすめする場所を投稿するとポイントがたまる仕組みのアプリを考えました。レンタル事業者との連携によるビジネスモデルまで検討しており、この辺りの展望もプレゼンに盛り込まれていました。

審査員からは、「隠れたおすすめスポットを引き出すというアプローチはニーズがありそう」という意見があった一方で、ポイント付与条件等の細かい点で指摘もありました。細かい調整点や問題点をつぶしながらブラッシュアップし、実現するところまで目指して頑張ってほしい。3人の熱意を感じる発表でした。

 

U18-03
金井晴一(長野県松本工業高等学校)
App:「とまるくん」
Member:金井晴一
Mentor:三澤実(長野県松本工業高等高校)
※信州大学長賞、KDDI賞受賞

「松本走り」という、松本地域特有の運転マナーの悪さを表す言葉があるそうです。自転車通学中に度々これに遭遇し、何とかしたいと思った長野県松本工業高等学校の金井晴一さんが開発したのは、スマホのカメラ機能を活用した、ドライバー向けの運転監視・警告アプリ「とまるくん」です。

アプリを起動したスマホを自動車にセットして運転すると、風景を画像解析して信号機の色を識別し、信号無視と思われる動作があると警告音で知らせてくれます。警告を無視して危険運転を続けると、警告音がだんだん大きくなっていきます。ドライブレコーダー機能もあり、自身の運転の振り返りもできるというものでした。実機デモでも、安定した動作を見せることができました。

「そもそも交通違反をする人はこのようなアプリをわざわざ使わない可能性がある。なので、いつの頃からか標準化されたシートベルトの警告音のように、標準の車載装備として浸透してほしい!」という審査員からの熱い意見もあり、社会的意義が高く可能性を感じるアプリでした。松本走りに限らず、世の中から危険運転を撲滅するために頑張ってほしいです。

 

U29(19~29歳)部門

大学生、高専生、専門学校生、社会人などなど、国も考え方も専門分野も異なる8組がDemoDayに出場しました。
開発者の理念や想いが乗ったアプリは、どれも開発者の熱い熱量を感じるものでした。

U29-01
オドンチメド ソドタウィラン(長岡工業高等専門学校)
App:「AIメータ」
Member:オドンチメド ソドタウィラン
Mentor:-
※総務省信越総合通信局長賞受賞

まるでストーリーを語るようなプレゼンで会場の空気を一変させたのは、長岡高専のオドンチメド ソドタウィランさん。アナログメータを画像処理とAIで自動で読み取るアプリを開発しました。

「アナログメータを見るためだけに休日もわざわざ通勤する人がいる。とても非効率だが、デジタルメータに変えようとすると莫大なコストがかかる上、入れ替え工事の際に稼働を止めなければならないため影響が大きく、なかなか実現できない」
と語るオドンチメドさん。アナログメータを画像で読み取るというシンプルなアイデアは、導入コストも安く、他への転用も可能な素晴らしいものであり、審査員からも感心する声が多数聞かれました。

オドンチメドさんの出身地であるモンゴル国は、人口が新宿駅の1日の利用者とだいたい同じくらいとのこと。「母国は人口密度が低いので、AIの技術を上手に取り入れる必要がある」と、落ち着いた口調で話してくれたオドンチメドさん。日本の高専で磨いた技術力を駆使して、母国はもちろん日本や世界でも活躍することを期待しています。

 

U29-02
KINC(信州大学)
App:「Smart Teach(スマティー)」
Member:田村弘、入江一帆、藤岡碧志
Mentor:小林一樹(信州大学)

教育現場の未来を明るくしたい、そのためには多岐に渡る教師の業務の負荷を少しでも軽減させたい、という想いからアプリ「Smart Teach(略してスマティー)」を開発したのは、信州大学のKINCのみなさん。注目したのは「小テスト」です。

むやみやたらに仕様を追加するのではなくあくまでも小テストにフォーカスし、問題作成機能・採点機能・成績管理機能・共有機能を持たせた、教師向けのアプリです。小テストの成績はグラフ等で可視化されるので、生徒ごとの傾向が分かり、対策も打ちやすくなります。応募資料の時点で、まるで商品化されたアプリのようなクオリティでしたが、実機デモもすでに使えるレベルにまで達しており、審査員もその完成度を高く評価していました。

近年注目が高まってきている「教師の働き方改革」に対して真摯に向き合っている姿勢にも評価が集まりました。独自性と初心を貫いて、最後までやりきって欲しいと切に願う、応援したくなるアプリでした。

 

U29-03
SKO(トライデントコンピューター専門学校)
App:「家庭de金融教育!」
Member:鈴木瀬七、北濱大輔、大岩紗弓
Mentor:河口英生(トライデントコンピュータ専門学校)

キャッシュレス社会の到来でますますお金の価値を感じにくくなる中、子どもにお金の重みや価値を気付かせるアプリ「家庭de金融教育!」を開発したのは、トライデントコンピューター専門学校のSKOのみなさん。

お手伝いの内容に応じてお小遣いがもらえ、収入、貯蓄、支出の履歴が管理できる、家計簿アプリの子ども版です。金融教育に関するアンケート結果に加え、反抗期前であることや欲しがるものが低額(お菓子等)という理由から、メインターゲットを小学校1~2年生と設定しました。

「子どもが報酬ほしさにお手伝いをするようになってしまわないか?」という質問に対し、
「報酬はあくまでも金融教育のために渡すものであり、最も必要なことは、大人が感謝の気持ちをきちんと伝えること」と答えたSKOのみなさん。
大人が仕事で得る給与にも、誰かの感謝の気持ちが込められているんだな、感謝に応えられる仕事をしないとな、という当たり前のことにも改めて気付かされるアプリでした。

 

U29-04
BRING HOPE(長野県工科短期大学校)
App:「Good Looking Bug」
Member:児玉澪央、駒井敦、北條史華、吉池将広
Mentor:野瀬裕昭(長野県工科短期大学校)
※NTTドコモ長野支店賞受賞

長野県の文化である「昆虫食」。苦手な人も多いかもしれませんが、一方で将来の貴重な栄養源として期待されている食物です。長野県工科短期大学校のBRING HOPEのみなさんは、そんな昆虫食の見た目の抵抗感をARにより緩和するアプリ「Good Looking Bug」を開発しました。

栄養価が高く低コストで生産できるにも関わらず、時として罰ゲームに使われる等、昆虫食がその見た目によってゲテモノ扱いされてしまうことに「長野県民として複雑な思いを抱えていた」と、BRING HOPEのみなさん。アプリを起動したスマホをゴーグルにセットして装着すると、皿やお箸・フォーク等に仕込んだARマーカーにより、抵抗感のない食べ物(エビフライ等)に見た目が変わるという仕組みです。

小芝居ありの実機デモでは、メンバーが実際にゴーグルに設置して食べる動作を見せてくれました。芝居のクオリティも高く、声もよく通っており(演劇の考察みたいで恐縮ですが。。)、とても見ごたえがありました。
「味は変えられないけど見た目を変えて解決しちゃおう」という、良い意味でぶっ飛んだ発想が若者らしく、またARの活用という点では、虫の栄養情報を横に表示させる等、もっともっと機能拡張ができそうな、明るく希望に満ちた作品でした。

 

U29-05
べっつみー(株式会社アソビズム長野ブランチ)
App:「あいまい系コミュニケーションシステム『ant』」
Member:阿部正寛、伊藤克
Mentor:-
※長野県知事賞受賞

昨年も出場した株式会社アソビズム長野ブランチのべっつみーのお2人が開発したのは、感謝の気持ちをあえてあいまいに伝えることで、豊かな信頼関係の構築を目指すアプリ「あいまい系コミュニケーションシステム『ant』」です。

10m以内の人に対して感謝の気持ちを抱いたときに、匿名の「ありがとう」をスマホのフリック動作で送れるサービスです。同時にありがとうを受け取ることもできますが、受け取り側は、誰が、いつ送ったものか、あえて分からなくしているという仕様です。今日1日、どこかで誰かに感謝されたんだな、ということだけが分かる仕組みになっています。

身近な人にも、忙しかったり照れくさかったりして感謝の気持ちを伝える機会が少なくなっていること、またインターネット上のコミュニケーションでは感謝は定量化された”評価”となり齟齬や誤解が生じやすいことから、
「あいまいに伝えることで、伝えやすくなるし伝わりやすくなるのでは?」
と話してくれた、べっつみーのみなさん。会場に表示されたQRコードを読み取ることで、観覧者の手持ちスマホからも実機デモを体験できるという演出も、素敵でした。

「指先でフリックすることで10m以内の人に感謝を伝える」という全く新しいコミュニケーションの姿が垣間見える、未来を感じる作品でした。

 

U29-06
チームばるぽん
App:「BallPOoN(バルポン)」
Member:小島まり(信州大学理学部)、分部広遥(慶應義塾大学経済学部)、関口恵太(信州大学工学部)
Mentor:-
※KDDI賞受賞

「今、目の前にいる人のことを知る」という新感覚SNSを開発したのは、チームばるぽんのみなさん。カメラをかざすと、目の前にいる人の気分や属性がARで表示されるというアプリ「BallPOoN」です。

街角や電車の中などで困っていそうな人がいたとき、逆に困っているので助けてほしいと思ったとき、周りが知らない人ばかりだと尻込みしてしまい、なかなか一歩を踏み出せない人も多いと思います。そんなコミュニケーションの壁を乗り越え、知らない人同士でもお互いの理解を深め、新しいコミュニケーションの形を創ることを目指すサービスです。対象となる人のすぐ脇に情報が表示される、まるでドラゴンボールのスカウターのような近未来感のあるデザインも、面白いアイデアです。

「他人にカメラを向ける(向けられる)抵抗感」や「他人に自分の感情や状況を知られる抵抗感」等、実装に向けては課題も多いこのアプリ。こうした審査員の突っ込みに対しても、毅然と冷静に自身の考えを答えるチームばるぽんのみなさんの姿が印象的でした。価値観のアップデートには障害がつきものだと思いますが、「どうしたらこのサービスを一般の人にも使ってもらえるのか?」というアイデアを諦めずに考え続けて欲しいアプリでした。

 

U29-07
ま、うすうす気づいてました(長岡工業高等専門学校)
App:「IoTネズミ捕り」
Member:バヤルバト ノムンバヤスガラント、星野大海
Mentor:-

「人類の歴史は、ネズミとの闘いだ――」。名言のような言葉で始まったユニークなプレゼンを披露してくれたのは、長岡高専のま、うすうす気づいてましたのお2人です。開発したアプリは「IoTネズミ捕り」。

作品名のとおり、センサーを搭載したIoTバネ式ネズミ捕り装置で、ネズミが捕れたことを知らせることで仕掛けから回収までを効率化するものです。加えて、どの時期にどのような場所でネズミが活動しているのかといったデータも蓄積されるため、それを活用することでさらなる捕獲の効率化も可能となります。
従来のバネ式ネズミ捕りにIoTを掛け合わせるシンプルなアイデアは、従来の製品に技術を付加して価値を上げる良例として、審査員からも高評価を得ていました。

「近所にバネ式ネズミ捕りの工場もある」と話してくれた、ま、うすうす気づいてましたのみなさん。身近な人の得意な力を借りてプロジェクトを実現していくことは、非常に重要であり、また楽しい要素の1つです。是非楽しんで開発を進めてほしいと思います。チーム名の由来(ネズミの「マウス」と、チーム名の「ま、うすうす~」がかかっている)も楽しかったです。

 

U29-08
HIPPOPOTAMUS
App:「OKAN」
Member:久保田恒平、住中真、河浦雄亮
Mentor:-

楽しい雰囲気の3人組、HIPPOPOTAMUSのみなさんが発表してくれたのは、”おかん口調”のリマインダアプリ。一言で言ってしまえばそれまでですが、開発の背景には、思わず考えさせられる母親への思いがありました。

実家を出て自立し、1人暮らしを始めるとどうしても自堕落な生活に陥りがち。実家でそのストッパー的な役割をしてくれていたのは、口うるさかった「おかん」であると分析し、ちょうどよいおかんの感じを、リマインドの頻度や口調で表現しています。設定どおりに正確にリマインドしてくれる既存のアプリとは一線を画した、世の1人暮らし(特に若者の男性)をターゲットにした、オリジナリティあふれるアプリです。

ベースがシンプルな分、応用アイデアも豊富で、質疑応答の際には「地方ごとに異なる母親像を搭載できないか考えている」などの面白そうなアイデアも聞かれました。ですが最も心に残ったのは、
「最終的な目標は、このアプリ『OKAN』をアンインストールすること、つまり母親から卒業し、真の自立を促すこと」。
皮肉なようですがなるほど、と思わずにはいられない、ICTとおかんを融合した技ありなアプリとプレゼンでした。

 

結果発表

厳正なる最終審査の結果、今回の表彰結果は以下のとおりとなりました!(※出場順)

【U15】
団体名・氏名 作品名 表彰 特別賞
吉村清太郎(鳴門教育大学附属小学校)※TV会議で発表 ネコトイレしないでね
水谷俊介(信州大学教育学部附属松本小学校) 自転車 あっ!! 信越情報通信懇談会長賞 NTTドコモ長野支店賞
片桐侑祐(宮田村立宮田小学校) 人間監視ドア
カイトスイっち(駒ヶ根市立赤穂小学校) ピタゴラロボット ゲームクリエイター賞
井汲優斗(未来工作ゼミ未来道場黒帯クラス) ここじゃねくと ソフトバンク賞
skylake(大町市立仁科台中学校) お年寄りとAI KDDI賞
木こりFamily(新島学園中学校) きこりダイエット
チョレギサラダ(新島学園中学校) 脱出型目覚まし時計
ベイちゃん愛好会(新島学園中学校) ポイント枕
宮島健(ハーバード ウェストレイクスクール)※TV会議で発表 My Formula 長野県教育委員会賞

 

【U18】
団体名・氏名 作品名 表彰 特別賞
電子工学部アルカディア7(長野県松本工業高等学校) 男子高校生の夢 萌えアプリ モエちゃん NTTドコモ長野支店賞
アウトドア侍(長野県松本工業高等学校) 信州探検隊
金井晴一(長野県松本工業高等学校) とまるくん 信州大学長賞 KDDI賞

 

【U29】
 団体名・氏名  作品名 表彰 特別賞
オドンチメド ソドタウィラン(長岡工業高等専門学校) AIメータ 総務省信越総合通信局長賞
KINC(信州大学) Smart Teach(スマティー)
SKO(トライデントコンピュータ専門学校) 家庭de金融教育!
BRING HOPE(長野県工科短期大学校) Good Looking Bug NTTドコモ長野支店賞
べっつみー(株式会社アソビズム長野ブランチ) あいまい系コミュニケーションシステム「ant」 長野県知事賞
チームばるぽん BallPOoN(バルポン) KDDI賞
ま、うすうす気づいてました(長岡工業高等専門学校) IoTネズミ捕り
HIPPOPOTAMUS OKAN

≪表彰・特別賞について≫
長野県知事賞:全部門を通じた本コンテストの最優秀者
総務省信越総合通信局長賞:U29の優秀者
信州大学長賞:U18の優秀者
長野県教育委員会賞:U15の優秀者
信越情報通信懇談会長賞:全部門を通じ特に印象に残る発表を行った者
NTTドコモ長野支店賞:各部門より1組ずつ
KDDI賞:各部門より1組ずつ
ソフトバンク賞:全部門を通じ1組
ゲームクリエイター賞:ゲーム性の高い作品の発表を行った1組
※起業家甲子園・万博への挑戦権は、獲得者なしでした。

終わりに

過去最多の応募68件から、これまた最多の21組が出場した今回のDemoDay。
今回、審査で高い評価を得た作品に共通していたのは、「課題が明確で解決方法がシンプル」だった作品です。言い換えれば、どんなアプリ?と言われたときに一言で表せるようなアプリ、という感じでしょうか。

「一言で表すこと」はとても重要なことです。自分が考えたアプリを誰かに発表しようとするとき、つい「あれもこれも伝えたい!」となりがちです。一生懸命時間をかけて深く考えたアイデアなら、なおさらですよね。
ですが、一歩立ち止まり「つまるところ、このアプリって何なんだろう?」と考えてみてください。そこで説明の言葉が二言三言になってしまう場合は、もしかするとまだブラッシュアップが足りないのかもしれません。

人を「あっ」と言わせるには、内容ももちろんですが、見せ方、伝え方など、印象も結構大切だったりします。コンセプトを一言で言い切ってしまえるアイデアは、それだけで人を惹き付けるオーラのようなものをまとうのかもしれません(もちろん、内容が伴っていないとダメですが)。
今回、残念ながら受賞できなかった作品や、書類審査で落ちてしまった作品にも、キラリと光るアイデアはたくさんありました。もしかすると、ブラッシュアップの仕方次第、資料やプレゼンの見せ方伝え方次第では、結果も変わっていたかもしれません。

今回応募してくれたみなさんは、きっとこれからも自身のアイデアを形にして、発信し続けていくのだと思います。そんなときは、「内容」と同じくらい、見せ方伝え方といった「印象」の部分にも、ぜひ意識を向けてみてください。印象の側面からアイデアを見つめ直すと、新たなブラッシュアップのアイデアが出てくると思います。

次回も、未来のICTクリエイターの挑戦を、心よりお待ちしています!

起業家甲子園・万博への挑戦権について

  • ニュースリリース
  • 2019.01.15

12月8日(土)に開催したDemoDayにおける起業家甲子園・万博への出場権について、残念ながら今年度は該当者なしとなりましたので、お知らせします。

今後とも信州未来アプリコンテスト0(ZERO)をよろしくお願いいたします。

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信州未来アプリコンテスト0〈ZERO〉事務局:一般社団法人 長野ITコラボレーションプラットフォーム(NICOLLAP)